今回は、前歯のインプラント治療の症例をご紹介します 。成功する治療のためには、手術そのものだけでなく、そこに至るまでの「正確な診査・診断」がいかに重要かをお伝えできればと思います。
1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
● 患者さん情報: 20代女性
● 主訴: 「右上の前歯の差し歯がぐらぐらする。4ヶ月後に引っ越しをするので、それまでに治療を終えたい。」
患者さんは、中学生の頃にバスケットボールの試合中に相手選手の肘が前歯に当たり、歯が折れてしまったご経験がありました 。その時に装着した差し歯が、最近になってぐらぐらと揺れるようになったとのことです 。また、お引っ越しを控えており、治療期間に期限があることもお悩みでした。
2. ご来院時の状態と精密な診断
初診時、右上の前歯はぐらぐらと揺れ、他の歯よりも少し伸びているように見える状態でした。
ここで最も重要なのは、「なぜこの歯が揺れているのか?」という原因を正確に診断することです 。原因の診断を誤れば、治療法も全く変わってきてしまいます 。歯科医師は、この時点で考えられる以下の可能性とそれに応じた治療法をすべて想定し、検査を進めていく必要があります 。
可能性①:差し歯の接着剤が外れかけている
この場合、差し歯を付け直すか 、作り直すことで対応できるため、抜歯にはなりません。
《想定される治療法》
a)差し歯を慎重に外し、もう一度その差し歯を強力な接着剤で装着し直す。
b)差し歯を外したあと、ピッタリと戻らないのであれば、差し歯を作り直す。
どちらにしてもこの場合は、歯を抜くという選択肢はありません。
可能性②:歯そのもの(歯根)が揺れている
揺れが軽度なら隣の歯と固定することで保存できる可能性がありますが 、重度の場合は抜歯が必要です。
《想定される治療法》
a)揺れの程度が少なければ、両方の隣の歯と固定し揺れを止める。
b)揺れの程度大きければ、抜歯をする必要がある。
可能性③:差し歯もしくは歯根が折れている
歯茎より上で折れている場合は、再度差し歯を作ることができますが 、歯茎より下で折れている場合は、抜歯するしかありません 。
《想定される治療法》
a)折れている場所が歯肉より上の場合は、折れた部分を除去し、再度差し歯を作製する。
b)折れている部分が歯肉より下の場合は、抜歯するしかない。
このように治療する前に歯科医師は、以上の6通りの治療法を考える必要があり、そのあと、各種の検査をして、正確な診断と治療法を1つ確定していくことになります。
被せ物を慎重に外し、歯の根の状態を詳しく検査したところ、緑の丸で囲んだ部分に「破折線」が見つかりました 。これは、歯の根が内部で折れてしまっていることを示しています。
この結果、診断は上記の「可能性③-b」に確定し 、この歯を保存することは不可能であるため、抜歯という治療方針を選択せざるを得なくなりました。
3. 最善を考えた治療計画のご提案
抜歯後の治療法には、大きく分けて①ブリッジ 、②入れ歯 、③インプラント の3つの選択肢があります。患者さんはそれぞれの利点・欠点を聞いた上で、インプラント治療を選択されました。
患者さんのお悩みは、お引っ越しまでの「治療期間」でした。そこで当院では、そのご希望に応えるため、治療期間を大幅に短縮できる「抜歯即時埋入即時荷重」という手術法をご提案しました。
これは、折れてしまった歯を抜いたその日にインプラントを入れ、さらにその日のうちに仮歯まで装着するという治療法です。傷口を最小限に抑えられ、治療期間も短くなるという大きなメリットがあります。
▼抜歯即時埋入インプラントの詳細はこちら
▼インプラント即時荷重の詳細はこちら
4. インプラント治療の実際
計画通り、抜歯からインプラントの埋入、仮歯の装着までを1日で行いました。CT画像は手術直後のもので、インプラントが適切な位置に埋入されていることが確認できます 。患者さんは手術当日から歯がない期間を過ごすことなく、見た目を気にせず生活を送ることができました。
5. インプラント治療後の経過と仕上がり
インプラントと骨がしっかり結合するのを待って、最終的なセラミックの歯を装着し、お引っ越し前に無事治療を終えることができました 。見た目も自然で、機能的にもご満足いただける仕上がりとなりました。
6. 担当医からのメッセージ
インプラント治療が成功するためには、もちろん手術が上手である必要があります 。しかし、それよりも前に、もっと重要なのはインプラントをする前の「診断」です。
今回の患者さんであれば、
●歯が揺れてきた根本的な原因は何であるか?
●その原因に対して、考えうるベストな治療法は何か?
これらを歯科医師が正しく把握し、最適な治療計画を立てることが全てのはじまりです。
インプラントのご相談で来られる方の中には、この最初の診断段階がうまく行えていない症例を多く見かけます。検査の結果、インプラントが必要ないと判断される患者さんもいらっしゃいます。
三国丘歯科クリニック 堺市インプラントオフィス 院長・山本は、インプラントの手術自体ももちろん自信がありますが、それよりも手術前の診査診断には、もっと自信があります。
お悩みの方は、ご相談だけでも承りますので、ぜひ一度ご相談ください。
治療内容 | 前歯のインプラント1本 |
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治療期間/治療回数 | 治療期間3ヶ月 治療回数10回程度 |
費用・費用内訳(※自費診療) | インプラント埋入手術 275000円(税込) ジルコニア上部冠 132000円(税込) 総額 407000円(税込) |
リスク・副作用 | 定期的なメンテナンスが必要です。口腔衛生状態が悪くなるとインプラント周囲炎にかかる可能性があります。
※出血、膨張、疼痛青痣、神経麻痺、補綴物・インプラント体の脱落、破折、インプラント周囲炎等 |
堺市の歯医者 三国丘歯科クリニック 堺市インプラントオフィスのインプラント治療
堺市の歯医者 三国丘歯科クリニック 堺市インプラントオフィスのインプラント治療は、傷口を最小限に抑えながら短時間で適切な位置にインプラント体を入れるために、また、血管や神経などの位置を確認しながら手術を行うために、「XガイドⅡ 3Dナビゲーションシステム」を導入しています。
三国丘歯科クリニック 堺市インプラントオフィスではインプラント治療に注力し、以下4つのインプラント治療が可能です。
①抜歯即時埋入
歯を抜いた直後にインプラント手術をする方法です。歯や歯ぐき、あごの骨の状態などが良好な場合に適応することができ、歯のない期間を短くすることで歯肉や顎の骨の吸収を防ぎます。
②フラップレス埋入
歯肉の切開(フラップ)を行わないインプラント手術です。歯科用CTなど専門の機器や技術が求められ、対応できる歯科医院が限られたインプラント治療法です。
③インプラント即時荷重
手術当日から噛めるようにするため、インプラント体を埋入する手術と同時に仮歯を入れるインプラント手術です。
④フルインプラント
すでに上顎または下顎に歯がない患者さんに適用されるインプラント治療です。
4~8本のインプラントを埋入し、そのインプラントを支えとして12~14本のセラミックの歯を再建します。
インプラントの上に装着する人工の歯はセラミックの中でも強度が高く、汚れが付着しにくいとされるジルコニアを取り扱っています。
歯の形を決めるために行う口の中の型取りは、短時間で不快感が少なくなるよう、従来のゴム状の素材を口に入れる方法ではなく、口腔内スキャナーを使用したデジタルシステムを活用しています。
歯を失った場合の治療法には「ブリッジ」「入れ歯」もあります。ただし、周りの歯への影響を考え、一生涯快適な食生活を送るために、「インプラント」は最も良い選択肢と三国丘歯科クリニックは考えています。
保険適用外の治療ではありますが、堺市の歯医者 三国丘歯科クリニック 堺市インプラントオフィスは「長い目でみて後悔のない治療」をコンセプトに、使用する歯科材料にこだわり、国内外の技術を応用した低侵襲で長持ちするインプラント治療で費用以上の価値をご提供できるよう努めています。
▼インプラント治療の詳細はこちら
監修:理事長/院長 山本 英樹
経歴:
大阪府立 三国丘高校 卒業
大阪大学 歯学部 卒業
平成17年 大阪府下 インプラントセンター勤務
平成22年 三国丘歯科クリニック 開設
平成26年 医療法人英歯会 理事長就任
令和 6年 MID-G役員就任
その他受賞歴:
MID-Gマニュアルコース MVP
日本臨床歯科CADCAM学会 最優秀会員発表アワード
日本臨床歯科CADCAM学会認定医